IDLで構築された、オーストラリアの津波判定ツールエンジン(翻訳記事)
オーストラリアでは、津波を引き起こす可能性がある強い地震が平均して週に1度発生します。地震発生数分以内に、地震に関連する地震データは、オーストラリア気象局とジオサイエンスオーストラリア(GA)が運営するオーストラリア合同津波警報センター(Joint Australian Tsunami Warning Centre : JATWC)にある津波判定支援ツール(DST:Tsunami Decision Support Tool) に読み込まれます。DSTはIDLプログラミング言語で開発され、発生した地震がオーストラリアやインド洋地域に津波の危険をもたらすかどうかを判定します。津波が発生する可能性が高い場合、DSTは脅威レベルを予測し、地理的ターゲットを特定し、適切な警告を発信します。
現代史上最悪の自然災害とされている2004年のインド洋大津波の発生後、オーストリア気象局は津波被害軽減を図るためDSTを作成しました。気象局は高度な視覚化と複雑な分析機能が要求されるため、Harris Geospatial Solutions のIDLプログラミング言語を選択しました。その後、Harrisのソリューション提供グループは最初の開発をサポートし、継続してDSTへの大幅なアップグレードを2018年に完成させました。
図:ニュージーランド南島の西海岸からマグニチュード8.6の地震が発生したため、オーストラリアへの津波脅威を評価するためのトレーニングモードで使用されたDSTの最新バージョン(v11.1)
津波ツールの構築
オーストラリアの天候、気候、水道を取り扱う国家機関として、気象局は津波を含む様々な自然現象に対応するために国民をサポートします。気象局およびGA JATWCセンターは、インド洋および環太平洋地域の地震と関連のイベントを24時間365日で監視する国際ネットワークの組織の一部として機能しています。パートナー機関からJATWCに送られてくる、多数のデータセットと観測データのうち、最も重要なのは地震観測のデータです。オーストラリアと世界中の何百もの地震計が、地下の変調を測定し、深度や震源の位置を特定します。JATWCは、マグニチュード6.5以上の海底地震を津波の脅威とみなし、さらに詳しく分析するためにデータをDSTに入力します。
DSTはIDLを使用して地震データと位置データを処理し、事前にプログラムされた津波波浪モデルシナリオとこれらを照合します。このツールを構築するにあたり、気象局は、海岸線で予測される波の影響に基づいて、複数の津波脅威レベルを定義しました。脅威の評価は、予想される地震の規模に対して最悪の場合のシナリオであり、脅威の予測レベルはオーストラリアへの過去の津波の影響と比較して評価されます。
ツールにプログラムされた脅威シナリオ
脅威レベルは「海洋」カテゴリと「陸上」カテゴリに分かれています。「海洋脅威」の予測は、現在の海岸線を越えて決して土地を浸水させない津波に関連したものですが、これらは沖合海域で泳ぐ人や小さな船に危険な流れ、離岸流や波を作り出すかもしれません。一方で、高レベルの「陸上脅威」は、大きな影響を与える陸上浸水の予測です。DSTは、脅威レベルを決定するだけでなく、IDLで作成された地理空間情報のコンピュータモデルを使用して、津波の危険性が最も高い地域を計算するツールが組み込まれています。JATWCは、オーストラリアとインド洋沿岸の海岸線全体をさまざまな長さの警告ゾーンに分けました。このモデルは、通常、いつでも津波の脅威にさらされている広範囲の複数のゾーンを識別します。
図:オーストラリアの海岸線は、沿岸域の天気予報ゾーンに対応する警告ゾーンに分かれています。ゾーンは可変長であり、地形は考慮されていません。
津波警報サービスの気象局国家責任者のミャオ氏(Yuelong Miao)は、津波警報のためには適時性(瞬時性)が必要であると強調しています。沿岸地域の住民は、地震が発生した場合、陸上に到達する可能性がある波に備えるための時間が30分もない可能性があります。JATWCの職員は、脅威が予測されるとDST生成タイマーを監視し、警報発令のデッドラインに間に合うようにします。また、地震および波高情報を継続して追加することができ、イベントの展開に合わせて脅威レベルを精密化することができます。
自動警告
DSTは、地震情報を検知して数秒以内に、想定されるシナリオとインパクトゾーン(波の最もパワーのある場所)を特定します。DSTユーザーは、電子メール、テキストメッセージ、およびTwitterを通じて影響を受ける可能性がある地域の個人、協力機関、ニュースメディア、および緊急サービスに警告をすぐに自動送信することができます。DSTは、IDLの地理空間可視化ツールを活用して、津波の発生場所とその到達先を示す動的Webマップを作成します。
Harrisは、2018年のDSTアップグレードの一環として、IDLの地理空間機能を活用して、インパクトゾーンの地図をGISレイヤーとして生成し、参加機関やパートナーのGISソフトウェア環境に直接転送できるようにしました。この色分けされたビジュアルマップ(視覚地図)は、DSTが新しい情報に基づいて津波予測を変更するので、わかりやすい画像で常に更新されます。気象局はすでにDSTの次のバージョンを計画しています。ミャオ氏によると、将来のエディションでは、リアルタイムのコンピュータモデリングを利用して、ツールをよりダイナミックにすることができます。津波脅威レベルは、事前計算されたモデルシナリオの代わりにオンデマンドコンピュータモデルを使用して決定されようになります。
この内容は、2018年10月26日のケーススタディの英文記事の翻訳です。
原文:https://www.nv5geospatialsoftware.com/Learn/Case-Studies/Case-Studies-Detail/ArtMID/10204/userid/62487/ArticleID/23543/IDL-Programming-Language-is-Engine-Behind-Australian-Tsunami-Decision-Tool